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EUDR、CSDDD、EUFLRにおけるデューデリジェンス要件への対応方法

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わずか1年半の間に、欧州連合(EU)において3つの重要な法令が制定され、規制の枠組みに大きな変化をもたらしました。EU森林破壊防止規則(EUDR)、企業持続可能性デューデリジェンス指令(CSDDD)、EU強制労働製品禁止規則(EUFLR)の導入は、貿易を通じた環境破壊や人権侵害への懸念が高まっていることを示すものです。これらの規制は、米国のウイグル強制労働防止法(UFLPA)など、同様の取り組みと軌を一にするものとなっています。

その結果、EU域内の企業や、EU域内でビジネスを行う外国企業は、自社の事業全体にわたってデューデリジェンスを実施する上で、新たな課題に直面しています。特に、これらの規制要件を確実に満たしながら、限られたリソースの中でどのように対応していくかというバランスが、企業にとって大きな課題となっています。

これらの規制はそれぞれ異なる目的を持っていますが、共通する要件も多く、企業が効率的に対応策を講じるうえでの手がかりとなります。本記事では、各規制の概要を整理するとともに、要件の重複するポイントを明らかにし、企業が新たなデューデリジェンス義務を果たすためにテクノロジーをどのように活用できるかについてご紹介します。

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EUDR、CSDDD、EUFLRの概要


EU森林破壊防止規則(EUDR)企業持続可能性デューデリジェンス指令(CSDDD)EU強制労働製品禁止規則(EUFLR)
規制のポイント森林破壊された土地から生産された製品を対象としています。企業活動全体にわたるデューデリジェンスを重視しつつ、人権および環境への幅広い影響を対象としています。グローバルなサプライチェーンにおける強制労働を主な対象とし、業種や地域を問わず、強制労働に関与するあらゆる製品に適用されます。
施行時期2023年6月29日に発効されました。中規模および大規模の事業者・貿易業者には2025年12月30日から適用され、中小企業には2026年6月30日から適用されます。2024年7月25日に発効されました。“Stop the clock”指令により、加盟国がCSDDDを国内法に移管する期限が1年間延期されました。第一弾は2028年7月26日から適用されます。2024年12月13日に発効されました。2027年12月14日から適用が開始されます。
目的アブラヤシ、牛、大豆、コーヒー、カカオ、木材、ゴムといった森林破壊の主な原因となる7つの主要商品および、それらを原材料とする製品(例:牛肉、家具、チョコレートなど)について、森林破壊や森林減少が行われている地域から調達された場合、EU内での販売を禁止します。企業に対して、自社の事業活動およびグローバルなサプライチェーン全体における人権および環境への影響について、デューデリジェンスを実施することを義務付けています。強制労働で製造された製品の市場流通を禁止することで、EUの強制労働対策に関する法的枠組みを強化します。
適用対象すべての事業者および取引業者に適用されます。事業者とは、関連製品をEU市場に初めて投入する者やEUから輸出する者を指し、取引業者とは、市場に既に流通している関連製品を売買する者を指します。従業員数が1,000人超、かつ全世界での純売上高が4億5,000万ユーロ超の大規模なEU企業に加えて、EU域内での純売上高が4億5,000万ユーロを超える非EU企業も対象となります。EU域内に輸入されるすべての製品、ならびにEU域内で生産されるすべての製品が対象となります。
規制要件企業は、自社のサプライチェーンが森林破壊や森林減少と関係していないことを証明しなければなりません。企業は、自社の事業活動、子会社、さらにはバリューチェーンに関連する取引先を対象に、リスクの評価と報告を定期的に行う企業デューデリジェンス義務を確立しなければなりません。企業は、強制労働の禁止に対応するために、十分に整備されたデューデリジェンス体制を構築・維持しなければなりません。
罰則規則に違反した場合、製品の市場投入の禁止や回収を含む是正措置が科される可能性があります。監督当局により、調査が行われ、制裁や罰金が科される可能性があります。違反があった場合、当該製品のEU市場への投入禁止、市場からの排除、または廃棄命令が科される可能性があります。
詳細Understanding and Preparing for the European Deforestation Regulation (EUDR)CSDDD, EUFLR, UFLPA: Developing a Coordinated Response to Global Supply Chain RegulationsCSDDD, EUFLR, UFLPA: Developing a Coordinated Response to Global Supply Chain Regulations

EUにおける規制の共通点

多くの組織は、これら3つの規制のうち複数の規制の対象となっています。これらの規制は目的が異なるものの、共通して求められている要件があります。それは、組織が自社の事業活動が環境や人権に与える影響をしっかりと把握することです。そのために、組織は自社の事業活動およびバリューチェーン全体にわたってデューデリジェンスを実施しなければなりません。

コンプライアンス業務を効率化し、個別の単発的な取り組みを避けるために、組織はグローバルなコンプライアンス要件を満たすための包括的かつ積極的なアプローチを採用すべきです。法務、コンプライアンス、調達、リスク管理部門が連携することで、複数の規制要件を統合した一貫した戦略を構築することが可能となります。

この戦略の一環として、組織はサプライヤーに関する調査の取り組みを、国や部門単位から企業全体のレベルへと高めつつあります。このような全社的なアプローチにより、以下のように、あるEU規制の要件への対応が、他の規制への対応をも支援することが可能になります。 

  • サプライチェーンのトレーサビリティは、EUDRおよびEUFLRへの準拠を確実にするための重要な要素です。トレーサビリティを実現するためのプロセスや技術は、両規制にまたがって活用することが可能です。
  • EUDRの要件に対応するために収集されたデータは、CSDDDが求めるものよりも詳細かつ具体的であることが多いですが、そのデータを簡略化し、CSDDDの報告書に組み込むことが可能です。
  • CSDDDに準拠するために実施されるデューデリジェンスは、自然な形で企業がEUDRやEUFLRに基づく法令違反を回避する助けとなります。

サプライチェーンリスク管理ソリューションは、この企業全体にわたるアプローチを実現するための重要な手段となります。

Sayariが複数の規制にまたがるデューデリジェンスを支援する方法

これらの規制の要件を満たすために、組織はTier2以降も含めたサプライチェーン全体の可視化を実現する必要がありますが、これは簡単なことではありません。現代のサプライチェーンの複雑さにより、製品の流通過程を原産地まで遡って追跡することは難しくなっています。

Sayariは、実際の貿易データを含む多様な世界中の公開情報を統合・分析することで、組織がサプライチェーンの可視化を実現することを支援します。Sayariは、250以上の国・地域にまたがる7億3,000万社以上の企業情報を収集し、企業の所有構造、事業活動、およびリスク状況を明らかにすることで、サプライチェーン全体の透明性向上に寄与しています。

具体的には、SayariはTier2以降も含めたサプライチェーン全体をマッピングし、原材料や部品の全体像と、それらが強制労働や森林破壊といったリスクにどの程度さらされているかを包括的に把握できるよう支援します。Sayariを活用することで、直接のサプライヤーだけでなく、その先にいるサプライヤーのサプライヤーまで把握し、リスクの評価をより正確に行うことが可能となります。

EUDR、CSDDD、EUFLRへの準拠のために、リスクをスクリーニングする方法を学べるSayariの個別のデモをぜひご依頼ください。

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